大判例

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広島高等裁判所 昭和28年(う)164号 判決

本件起訴状に訴因の第一の(一)として論旨摘録の様な窃盗の事実と、第一の(二)として論旨摘録の様な賍物牙保の事実とを記載し且右(一)(二)の訴因は択一関係にあるものと記載してあること、原判決は右(一)(二)の訴因は其の基本的事実を異にし夫々別個独立の犯罪であつて、同一の事実に基く数個の訴因を択一関係に於て記載するという方法に依り起訴することは許されないものであるが、検察官の真意を合理的に推測して右の起訴全部を無効とすることなく、右(一)(二)の各別個独立の犯罪に付夫々公訴の提起があつたものと解すべきであるとして各々に付実体的審理を為した上主文に於て(一)の訴因に付有罪(二)の訴因に付無罪の言渡をしたことは孰れも所論の通りである。よつて先ず仮に右(一)(二)の各訴因が原審認定の通り其の基本的事実に於て同一性のない別個独立の犯罪であるとして、之を検察官が誤つて同一公訴事実に基く二個の訴因であるとして択一関係に起訴した場合、裁判所が之を補正する手続を経ることなく直ちに別個独立の二個の犯罪に付て公訴の提起があつたものとして、其の各訴因に付併合罪に対すると同様の裁判をすることが許されるか否かを按ずるに、訴因の択一的記載とは同一の公訴事実の範囲内に於て之を法律的に数個の訴因に構成し其の訴因の中の何れかの一に該当するものであると主張するものであり、従つて起訴せられた事実は一個であつて数個の訴因の中其の事実が何れか一の訴因に該当するものと認定されれば夫に依り其の公訴事実全部に付ての審判は終るものであるから公訴事実が同時に数個の訴因の中の二以上の訴因に該当するといふことは有り得ず、又数個の訴因の各々に付て主文に於て其の判断を示す必要はないものである。従て起訴状に数個の訴因を択一的に記載するといふことと数個の別個独立の犯罪事実を一通の起訴状に記載して起訴するといふことは相容れない関係にあるものであると共に被告人にとつても一個の公訴事実に基く数個の訴因の択一的記載であつて其の中の何れかの一に付てのみ有罪の裁判を受けるものと信じて居たところ、判決の言渡を受けて見ると択一関係に於て記載されて居た数個の訴因が突如夫々別個独立の公訴事実に基く訴因であるとされて当初から併合罪として起訴せられた場合と同様の裁判を受けたことを発見することは其の防禦権を甚しく侵害せられたものといはなければならないから、起訴状に択一関係に於て記載せられて居る数個の訴因に付其の基本的事実関係に於て同一性が認められない場合、裁判所が之を補正する手続を経ないで直ちに起訴状の「択一関係にある」との記載を無視して起訴状記載の訴因に対応する各別個の事実に付て夫々公訴の提起があつたものとして審判することは許されないものと解する。故に本件に於て原審が何等の手続を経ないで択一関係として記載せられて居る前記第一の(一)及(二)の各訴因を其の基本的事実に同一性がないとの理由で直ちに夫々別個独立の窃盗と賍物牙保の事実に付起訴があつたものとして審判したことは違法であるといはなければならない。

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